世界中の科学者に、人が感じうる感情をすべて挙げてくださいと頼んだら、科学者の数とほぼ同じだけの答えが返ってくるでしょう。1992年、ポール・エクマンは6つの人間の感情を示しました。喜び、悲しみ、怒り、恐れ、驚き、嫌悪、そして軽蔑です。この論文は長いあいだ答えとして受け入れられてきましたが、2017年の研究では27種類の感情が見つかりました。また、私たちはあらゆる感情を感じられるけれど、それらはすべて、ごく少数の原始的な感情の組み合わせにすぎない。そう説明する理論もいくつかあります。数式の答えのように、少しの喜びと少しの恐れが混ざると、「わくわく」という新しい感情になる、というわけです。
感情と人間の脳をめぐる話はとても興味をそそりますが、もっと実用的な答えは、自分がどう感じているかを記録していくことです。そのために役立つのが、ムードトラッカーです。
ムードトラッカーの仕組み
ムードトラッカーとは、毎日なんらかの形で評価を残せる仕組みのことです。これによって、自分の気持ちを、より客観的に、傾向として捉えやすくなります。よくできたムードトラッカーなら傾向の分析まで行い、新しく記録するたびに気づきを見せてくれます。
決められた感情
多くのムードトラッカーには、喜び、悲しみ、ストレス、不安、高揚といった、決められた選択肢がいくつか用意されています。しばらくのあいだはそれで十分足りるのですが、残念ながら、どこかで物足りなくなる瞬間が来ます。たとえば、数週間前の交通事故のことで、心がひどく打ちのめされているとしましょう。そんなとき、何が自分の気分を苦しめているのかを、ムードトラッカーに直接伝えられたらいいと思いませんか。車のアイコンでもいいし、「交通事故」という言葉でもいい。そして1年後に振り返る場面を想像してみてください。悲しい顔のマークが並んでいるより、車のアイコンが十数個並んでいるほうが、ずっと多くを語ってくれるはずです。
自分でつくる感情は、あらかじめ用意された選択肢よりも細やかです。文脈を添えてくれますし、心の健康にとって意味のある出来事を残してくれます。これは、いつか振り返るときにこそ効いてきます。
紙とアプリ
自分だけの感情を書き足すのは、紙の上ならかんたんです。一方、アプリではあまり用意されていません。たいていの場合、分析の仕組みやグラフの表示が、どんな気分の選択肢があるのかをあらかじめ知っておく必要があるからです。紙なら、思いついたものをその場で書き足して、そのまま使い続けられます。ここでの難しさは、一貫性を保つことです。今は車の絵や「事故」という言葉を使っていても、2年後、3年後も同じように書けているでしょうか。
私たちにできること
Luci: Mental Healthには、高機能なムードトラッカーが組み込まれています。自分だけの感情をアプリに登録でき、今も、そして何年先も、その選択肢を覚えていてくれます。1〜5、あるいは1〜10というシンプルな段階評価と組み合わせれば、その日の気分を相対的に捉えるのにとても役立ちます。
まとめ
まとめると、ムードトラッカーを続けることは、短い目でも長い目でも、自分の気持ちを残していくすばらしい方法です。自分だけの感情を使えば、細やかな気持ちや出来事まで記録できます。ここで鍵になるのは一貫性です。ばらばらの感情を使ってしまうと、せっかくのデータが濁ってしまいます。
