心理学

ネガティブな思考パターンに気づいて、手放す

2023年6月28日 公開

まずは、リサという架空の人物のお話から始めましょう。彼女は教室に立ち続けて20年近くになる、ベテランの先生です。その日、リサは先史時代の生き物の歴史について、すばらしい授業をしました。「今日の授業、先生すごくよかったです!」教室の反対側から、ひとりの生徒がそう声をかけます。どう返せばいいのかわからず、リサは少し口ごもってから、こう言いました。「ありがとう。でもね、スライドは同僚のヘンリーがずいぶん手伝ってくれたのよ」。

その夜、リサはこう考えます。種の起源のあたりのつなぎは、もう少しうまくやれたはず。でも全体としては悪くなかった。まあ当然よね、もう何年もやっているんだから。いつかは同僚のボブくらいの熱量で話せるようになりたいな。ああ、あのつなぎさえうまくいっていたら……。

先生のリサが、せっかくの褒め言葉をうまく受け取れなかった短いお話です。彼女の物語のなかに、ネガティブな考えがあることに気づいた方もいるかもしれません。でも実は、この短い文章のなかだけでも、よくあるネガティブな思考パターンが3つ以上ひそんでいるのです。そしてあなたも、気づかないうちに毎日同じことをしているかもしれません。ここからは、暮らしから手放していきたいネガティブな思考パターンを、いくつか見ていきましょう。

全か無か

よくある落とし穴のひとつが、世界を「はい」か「いいえ」に分けてしまうことです。物事は良いか悪いか、白か黒か、というように。このお話のなかで、リサは授業のちょっとしたミスだけに目を向けています。出来事に心のフィルターをかけてしまい、そのひとつのネガティブな考えばかりを繰り返し噛みしめているのです。だれも気づいていないかもしれないのに、それどころか生徒からは褒めてもらえたのに、リサの目に映るのは「もっとうまくやりたかったあのつなぎ」だけ。そうしてネガティブな面だけに焦点が合い、ほぼ完璧だった一日が、まるごと失敗だったように見えてしまうのです。

よい面を打ち消してしまう

褒められたとたん、リサは別の誰かの名前を出して、その良い体験から自分を遠ざけようとしています。まるで、自分の努力を「なかったこと」にしているかのようです。たとえ本人にそのつもりはなくても、「良いことが起きるのは他の人のおかげ」という考えが、知らないうちに心に忍び込んでいるのかもしれません。

「〜すべき」

その後の場面では、リサが自分の授業を思い返しながら「こうあるべきなのに」と口にし、いつかボブのような熱量で話せるようになりたい、と願っています。この一連の考え方には、「感情的決めつけ」と呼ばれる現象が含まれています。自分が感じていることを、そのまま事実だと思い込んでしまうのです。ボブのほうが情熱的で、リサは経験が長いのだから当然うまくやれて当たり前——本人は気づかないまま、それらを本当のことだと信じています。けれど現実には、ボブのほうが情熱的だとは誰も思っていないかもしれませんし、リサは何年経験を積んでもなかなか真似できないほど、生まれつき話すのが上手な人なのかもしれません。

ネガティブな思考パターンは、主観のなかにいるとなかなか捕まえられません。よくあるパターンと、その見た目を知っておくことが、不公平でネガティブな考えとのバランスを取り戻す助けになります。

ネガティブな考えを減らすには、毎日自分の気持ちを振り返ってみてください。頭のなかで反芻するのではなく、いったん書き出して、その日の後のほうでもう一度眺めてみるのです。自分の考えから少し距離を置いて、外側にいる中立な人の目線で出来事を描写してみるのも役に立ちます。

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