毎月のお給料に、自分は見合っているでしょうか。このチームを前に進めていくのに、自分がふさわしい人間だと思えますか。あなたが担っている機械のメンテナンスは、本当に専任の担当者が必要なほど難しい仕事なのでしょうか。職場は、ときに知的な戦場のように感じられることがあります。ちゃんと成果を出しているのに、ふと自分を疑ってしまう。いつか「偽物だ」と見破られるのではないか。しょせん自分は一発屋にすぎないのではないか。けれど、そのどちらもおそらく起こりません。これは「インポスター症候群」と呼ばれる現象です。
インポスター症候群とは?
インポスター症候群とは、「もうすぐ自分は偽物だとばれてしまう」という、しつこくつきまとう感覚のことです。たとえば、職場で自分の能力を疑われるのではないかと怖くなる。あるいは、職場での成功は「ちょっとしたコツ」のおかげにすぎず、誰でもできるし、遠からず見抜かれてしまうと考えてしまう。学位も長年の経験もあるのに、「数週間本気で取り組めば、誰にでも自分と同じことができるはずだ」と思ってしまうのです。
インポスター症候群が独特なのは、外から見える事実がたいていその逆を語っている点です。実は、その成功そのものが、心のなかに不安を生み出しているのです。
「インポスター現象」という言葉が初めて登場したのは、Pauline R. Clance と Suzanne A. による「The Impostor Phenomenon in High Achieving Women: Dynamics and Therapeutic Intervention」という論文でした。1980年代に発表された当時、インポスター症候群は成功した女性に多く見られるものだと考えられていました。これはのちに修正され、症状に性別による差はないことがわかっています。
インポスター症候群がとくに多く見られるのは、自分の成果を低く見積もる人、成功を運などの外的な要因のせいにする人、そして同じような成功を手にするには人より努力しなければならないと信じている人です。
一見すると害のないものに思えますが、インポスター症候群は燃え尽きのリスクを高め、仕事のパフォーマンスを下げ、職場での満足感を損なうことにつながります。
このマインドトラップから抜け出すには?
「自分はここにいていい」という感覚を育てることが、インポスター症候群の影響を和らげてくれる。研究ではそうしたことがわかっています。今の自分の成功につながった過去の実績を、リストにして残しておくのもいいでしょう。その記録は、不安な気持ちを地に足のついたものに戻してくれる「証拠」になります。
もうひとつは、いっそ不安をそのまま抱えたまま、先へ進んでしまうという方法です。自分ではどうにもできないことは、いつだって存在します。そこで歯車を空回りさせていると、コントロールできないものをコントロールしようとすることになり、不安はかえって大きくなってしまいます。
それよりも、十分に手にする資格のあるその成功を、どうか味わってください。インポスター症候群のような感覚があるということは、それだけ失いたくない何かを、あなたがすでに手にしているということです。そのために、きっと一生懸命がんばってきたはずです。運でも、ちょっとしたコツでもありません。振り返ってみれば、とくに苦しかった時期のあなたの粘り強さと機転こそが、今いる場所へ連れてきてくれたのだとわかるでしょう。その一秒一秒を、あなたは受け取る資格があります。

