心理学

先延ばしのリスク

2023年6月14日 公開

「プロジェクトXは来週に回そう」——退屈だったり、ややこしかったり、気が重かったりする仕事の予定を立てるとき、よく出てくる答えです。頭のなかでは、こんなことが起きています。「どちらもやらなければいけないのはわかっている。でも、こっちのほうがやりたい。だから、プロジェクトXに時間を使うのは後回しにしよう」。これは悪いことなのでしょうか。必要もないのに後回しにしてしまうこの現象を、私たちは「先延ばし」と呼びます。そして答えは、場合による、です。

まずは、みんなが気づいていて口にしないことに触れておきましょう。先延ばしをしてしまうのは、怠けているからではありません。怠けるというのは、必要な努力を自分の意思でしないことです。一方、先延ばしは、多くの場合、自分の内側にある理由から、その作業を後ろにずらしているだけです。怠けぐせは直したほうがいいものですが、先延ばしはもう少し複雑で、良い面も悪い面もあります。たしかに先延ばしにはリスクがあります。では、なぜ私たちは先延ばしをするのでしょう。

先延ばしの多くは、「わからないこと」への不安から生まれます。やり終えたあとにどんな反応が返ってくるかわからない。そもそも、そのやり方が(まだ)わからない。あるいは、どれだけ時間がかかるのか、どれだけ退屈なのかを思うと、それだけで気が重い。理由はどうあれ、こわいと感じることをしなければならないとき、先延ばしは起こりやすくなります。たとえば確定申告(結果への不安)、大事なレポート(作業の難しさ)、庭の物置の修理(かかる時間や難しさ、あるいはその両方)などです。

わかったうえで後回しにすることは、いつも悪いこととは限りません。単に、目の前の優先順位に合わせて予定を組み直したいだけ、ということもあります。たとえば、先に古い案件を終わらせるために新しいプロジェクトを後ろにずらすのは、とても理にかなっています。ただし、ここにはいくつかのリスクもあります。おもに、後回しにすることで時間の使い方が悪くなったり、ストレスや不安、疲れが増したり、あるいは自分で決めるはずだったことを他人に決められてしまったりすることです。たとえば、内定の返事をあまり長く保留していると、相手の会社がしびれを切らして別の人を採用してしまうかもしれません。

自分が先延ばしをしていると気づけるだけで、それとの付き合い方はずいぶん変わります。後回しにしている自分に気づいたら、「後回しにする正当な理由はあるだろうか」「そうすることで困ったことは起きないだろうか」と、自分に聞いてみてください。答えが「ノー」なら、思いきってプロジェクトXに取りかかってみましょう。一度で終わらせられなくても大丈夫です。手をつけるだけで物事は動き出し、あなたを先延ばしへ引き戻そうとしていた不安は、いつのまにか消えているかもしれません。やりましたね。先延ばしを乗り越えられました。

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